不動産についての権利関係などを知るには、法務局に行って登記事項証明書または要約書の交付を受けることが一番です。
ただ、登記記録だけからその不動産についての情報をすべて得られるわけではありません。
特に、登記記録には図面は含まれませんので、図面であらわさざるをえない情報については、登記記録の調査だけでは不十分です。
そこで、法務局では各種の図面を備え置くことで、不動産について調査するときの便宜を図っています。
普通、土地の上にあるものを示す場合には地図が使われます。不動産も土地なり建物なりその所在を示すためには地図が最適なはずです。
そのため、不動産登記法でも各法務局に正確な地図を備え置きべきことを定めています。しかし、残念ながら予算不足などの事情からほとんどの法務局にこの「地図」は配備されていないのが現状です。
この代わりに法務局には「公図」という図面が置かれています。この公図はもともと税金を徴収するために作成されたものを税務署から法務局に移したものです。
ただ、多くは明治時代に作成されたものがもとになっているので、現在の地形、面積、位置関係を正確に反映しているとは限りません。そのため、公図の写しを取得しても登記事項証明書のような正式な証明書としては使用することはできません。
ただ、登記事項証明書や他の図面などと併せて使用することで、参考資料として十分利用できるでしょう。
公図を閲覧するには法務局に用意されている「地図等の閲覧・写し申請書」を使用します。必要事項を記入して、チェック欄については「閲覧」・「地図・公図」の欄にチェックを入れます。また、不動産を指定するために「地図番号」と「地番」を記入します。
地図番号は法務局に置かれているブルーマップや公図番号索引簿で調べることができます。
閲覧のための手数料は、公図1枚あたり450円です。公図をコピーすることもできます。
一筆の土地を複数の土地に分割することを分筆といいますが、この分筆登記の申請をするときには地積測量図の提出が求められます。
登記記録上の土地の面積が誤っている場合、それを正確なものに直す登記をしますが、その申請をするときにも「地積測量図」の提出を求められます。
地積測量図は法務局に保管され、これを調べることで、土地の形状や各辺の長さ、道路との関係を知ることができます。
また、地積測量図には、面積算定のための計算表(求積表)、方位、境界の種別なども記載されています。
地積測量図の閲覧申請も公図の場合と同じ手続きをします。「地図等の閲覧・写し申請書」に必要事項を記入して「閲覧」、「地積測量図・土地所在図」の欄にチェックを入れます。手数料は公図と同じで、土地一筆につき450円です。
建物について、敷地との位置関係などを調べたい場合、建物の登記記録を調査してもわかりません。そこで法律上は、各法務局に「建物所在図」を備え置くように規定されています。
この建物所在図は建物が敷地に対して所在する位置関係を示していて、建物に特有の家屋番号を表示しているものです。ただ、残念なことに現時点では、この建物所在図を備え付けている法務局は、それほど多くはありません。
そのため、建物所在図を補うものとして「建物図面」が法務局に用意されています。この建物図面には建物の1階の部分の形状と敷地との位置関係が図示されています。
これを参照することによって、建物登記簿だけからは得ることのできない情報を得ることができます。
この建物図面は登記申請者から提出されたものです。建物を新築したり増改築したりさらには一部滅失したりした場合や誤って記載されている建物の面積を改める場合に、申請にともなって提出される図面です。
建物図面を閲覧したいときは、法務局に用意されている「地図等の閲覧・写し申請書」に建物の所在・家屋番号など必要事項を記入して提出します。このとき、チェック欄では「閲覧」と「建物図面」にチェックを入れます。手数料は建物一軒あたり450円です。
たとえば、中古の一戸建てを購入しようとする場合に、その建物の内部がどのような造りになっているのか、各階の床面積がどのくらいあるのかについては、誰でも気になるところです。
現地に行き、実際に内部を見せてもらうことも当然ですが、具体的な数字で表された図面で参照することができれば、さらに確実な状況の把握ができるようになります。
そのような場合に役立つ図面が「各階平面図」です。各階平面図にはその建物の各階の形状や床面積が表示されていて、建物図面とともに建物の登記記録を補ってその建物に関する有益な情報を提供してくれます。
各階平面図も建物の新築などの申請のときに建物図面と一緒に申請者によって提出されます。
閲覧を希望する場合は、その手続は建物図面の場合と同様です。「地図等の閲覧・写し申請書」に必要事項を記入して申請してください。手数料は建物一軒につき450円です。
法務局には公図などの図面が用意されていて、登記記録からだけでは十分に把握することのできない情報を提供しています。
しかし、以上に述べてきた図面だけでは、まだまだ不動産に関する情報を十分に理解することはできません。
不動産をめぐる権利関係は多種多様なために、これらの図面で補ってもまだ把握しきれないからです。
法務局では上記の図面以外にも不動産を調べる手がかりとして以下に列挙する資料を用意しています。不動産について調査するときに、調査の目的などに応じて活用してみるとよいでしょう。
地役権といってもあまり耳慣れない言葉かもしれません。地役権とは、ある土地(要役地)を利用するために、他の土地(承役地)を利用することができる権利です。
たとえば、道路に出るまでに小さな通路はあるが自動車が出られるほどの広さはないので、道路との間にある隣の土地に自動車が通るための通路を開かせてもらう場合や隣の土地の井戸から水を引かせてもらう場合などです。
地役権は双方の土地の所有者同士や地上権者などとの契約によって設定することができます。そして、設定すると権利として登記することもできます。
地役権といってもしの種類や内容・範囲はさまざまです。そのため、地役権の内容について第三者が登記を通じて理解しやすいように、地役権設定の範囲が承役地の一部である場合は、登記申請のときにその範囲を明らかにした「地役権図面」を提出することになっています。
この地役権図面を参照することによって、その土地に関係する地役権を十分に知ることができるわけです。
よく不動産を担保にして借金をすることがあります。工場経営者も事業の資金を工面するために工場のある土地や建物を担保にすることがよくあります。
ただ、工場の場合は、土地や建物だけではなく、その中にある機械や材料などもワンセットで担保に入れたほうが価値は高いといえます。工場全体が一体となってはじめて生産活動をすることができるからです。
この場合に工場を構成するどの範囲のものまでが担保の対象となっているのかを明らかにするために、登記申請のときに「工場財団目録」を提出することになっています。
第三者は、この目録を参照して担保の範囲を知ることができるのです。
工場に抵当権を設定するときによく問題になるのが、その抵当権はどの範囲にまで効力が及んでいるかということです。
特に、工場の内部には高価な精密機械などが設置されていることが多いものです。
そこで、抵当権設定登記を申請するときには「機械器具目録」を提出して、抵当権の効力の及ぶ機械や器具の範囲・数量を明らかにしています。
借金をした場合にそれを担保するために不動産に抵当権などの担保権を設定しますが、1つの不動産だけでは十分な担保にならないこともあります。
その場合は、複数の不動産に同時に担保権を設定したり、まず1つの不動産について担保権を設定し、後で他の不動産に担保権の追加設定をしたりします。
この場合、他のどの不動産に担保権が設定されているかを知ることができるようにするために「共同担保目録」が作成されます。
共同担保目録は、登記官が作成することになっています。
不動産の所有者が他人に不動産の管理・処分などをまかせた場合に、そのまかせた内容を記録したものです。