住宅を新築した場合の登記について(建物表題登記)

【行政書士西尾真一事務所】

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建物の表題登記とは

住宅を新築した場合には、その登記をすることが必要です。

 

中古建売住宅や土地の場合はすでに登記記録が作成されているのが普通ですが、新築の場合は登記記録そのものがありません。

 

そこで、登記記録を作る手続きをすることになります。登記記録には「表題部」と「権利部」がありますが、いきなり権利部を作る手続きをすることはできません。

 

まず、表題部を作るための登記の申請をしなければならず、このような登記を「表題登記」といいます。

 

表題登記は建物の建築後1か月以内の申請が義務づけられており、この義務に違反すると10万円以下の過料に処せられます。表題登記には一般の登記が有する対抗力(第三者に対して不動産に関する権利を主張できる効力)はありませんが、表題登記をしないと、権利に関する登記をすることもできず不動産に関する権利の確保がままならなくなってしまいます。

 

一般的にいって費用もそれほど多くかかるわけではないので、なるべく早めに表題登記をしておくべきです。

 

なお、もし建築後1か月を経過したとしても、表題登記の申請自体は認められます。

 

建物の表題部には、建物の所在地や家屋番号の他、建物の面積、構造、種類などの物理的状況が記録されます。ですから、表題登記を申請する場合には、実際に建物の測量をする必要があり、測量に基づいて作成した各種の図面を法務局に提出しなければなりません。

 

そこで、表題登記は、測量や作図の専門家でもある土地家屋調査士に依頼することが多いようです。土地家屋調査士は建物のある現地へ行って、建物の物理的状況を調査・測量します。

 

そして、その結果を基に、敷地と建物の位置関係を現した「建物図面」と建物の各階の様子を図示した「各階平面図」を作成します。

 

表題登記の申請では、土地家屋調査士の作成する図面以外にも、申請人の所有権を証明する書面として以下に説明する書類が必要です。

 

①建築主が登記申請を土地家屋調査士に依頼するための委任状

②建築主の住民票の写し

③建築請負関係の書類として、請負代金の領収書、建物引渡証明書、請負人の印鑑証明書、請負人の資格証明書

④建築主事から交付される建築確認通知書、検査済証

 

土地家屋調査士に上記の書類を手渡して、作成した図面と共に法務局に提出してまらいます。表題登記の場合、10日から15日程度で登記が終了し、表題登記済証が交付されます。土地家屋調査士から表題登記済証を受領して手続きは終わります。

 

第三者に権利を主張するには保存登記が必要

表題登記をしただけでは、第三者に対して不動産の所有権を主張することができません。第三者に所有権を主張するためには「所有権の保存登記」をしなければなりません。

 

所有権の保存登記というのは、誰の所有物であるのかを公示して、所有者としての権利を守るための登記です。通常、所有権保存登記をすることによってはじめて登記記録に「権利部」が作られます。表題登記は土地家屋調査士に依頼しますが、所有権保存登記は司法書士に依頼します。

 

所有権保存登記の場合、表題登記をした時点で建築主事の交付した建築確認通知書、または建物引渡証明書などの添付書類によって建物の所有者が誰であるかは確認されているので、添付書類も企画的少なくてすみます。

 

登記申請から数日間から十数日間程度で所有権保存登記手続きが完了します。所有権保存登記の場合も、手続きが完了すると登記識別情報通知が交付されます。

 

借地上の建物の保存登記の効力について

建物を建てたのが自分の土地ではなく借地の場合は、できるだけ早く表題登記と所有権保存登記をしておくべきです。

 

「売買は賃借権を破る」という言葉があるように、土地の賃料を払って借りていても、土地の所有権が移転し、新所有者に建物の撤去と立退きを請求されたら、それに従わなければならないのが原則です。

 

しかし、それではせっかく建てた新築の建物がムダになりますし、そこで仕事や生活をしている人にとっては酷な結果になってしまいます。

 

そこで、民法では土地の登記記録に借地権(賃借権、地上権)を登記すれば、その借地権を第三者にも主張することができるとしています。つまり、土地の所有権が譲渡されても新所有者に対して借地権を主張することができるのです。

 

ただ、この借地権の登記手続きには地主の協力が必要です。一般的に地主は、借地権の登記には消極的です。借主の立場を強くし、自分の立場を弱くするからです。

 

そのため、借地借家法という法律によって借主の保護を充実させています。借地借家法は、借地上にある建物について登記がなされていれば、土地について借地権の登記がある場合と同様に対抗力(第三者に対して不動産に関する権利を主張できる効力)が生じるとしています。

 

建物の所有権保存登記は地主の協力がなくても自分で手続きができますから、容易に借地権あるいは建物を保護することができるのです。

 

なお、建物の所有権保存登記がされていなくても、表題登記がなされていれば、借地権の対抗力が認められるとされています。

 

借地上に建物を建てたときは、出来る限り早期に、少なくとも表題登記を申請するべきです。

 

建物の登記の申請について

建物の登記とは、建物を増築などで面積を変更した時、建物を解体して取り壊したときなどには、1カ月以内に、法務局へ建物の登記を申請しなければなりません。

 

建物を新築した時~建物表題登記

建物を増築した時~建物表題部変更登記

建物を取り壊した時~建物滅失登記

 

それぞれの登記は、建物の新築工事が完了してから1カ月以内

建物の増築工事が完了してから1カ月以内

建物の取壊し工事が完了してから1カ月以内に申請しなければなりません。

 

なお、建物の登記の申請方法については、不動産登記法で細かく決められていますので、法律に則った記載が必要です。

 

そして、1カ月以内に建物の登記の申請をしない場合には、10万円以下の過料が課されますが、実際には、罰則は適用されていないですので、多少遅れても申請しましょう。

 

建物の登記の申請先

建物の登記の申請先については、その建物の所在している地域を管轄している法務局になります。

 

法務局の組織上、法務局、地方法務局、支局、出張所といった4種類の名称がありますが、いずれも法務局であることに変わりはありません。

 

つまり、建物の登記を申請する法務局というのは、その建物の所在地によって決まっていますので、管轄法務局以外の法務局に申請書類を提出しても、受け付けてもらえません。

 

ですから、建物の登記を申請する前に、その建物を管轄している法務局がどこなのかを事前に確認する必要があります。

 

管轄法務局がどこなのかについては、近くの法務局に電話や窓口で聞けばすぐに教えてもらえます。

 

建物表題登記をしていない建物(未登記建物)

建物を新築した時に、本来すべき建物表題登記を法務局に申請していない建物(未登記建物)も、意外と多く存在します。

 

このような建物表題登記をしていない建物のことを、未登記建物と呼んでいます。

 

建物表題登記をしていないからといって、固定資産税などを免れるわけではありません。

市役所の固定資産税係の担当者は、毎年、地域を見回って、建物が新築されていれば、その建物について課税してきます。

 

市役所は未登記建物として固定資産税を課税してきます。

 

いずれにしても、未登記建物のままでは、銀行でローンを組む場合や、売買する時に、所有権などいろいろと問題になりますので、新築時に、建物表題登記ができないのであれば、遅れてでも、建物表題登記の申請をするべきでしょう。