マンションには大きく分けて2通りあり、一つは所有者に家賃を支払う賃貸型と、もう一つは所有者から買い取って居住する分譲型があります。
賃貸型では、通常は居住している区画は独立して登記すべき対象にはなっていません。
一方、分譲型では、所有権を第三者に譲渡したり、抵当権などの担保権を設定したり、賃借権を設定して第三者に貸し出すこともできます。
そのため、1つの区画ごとに権利関係を明示する必要性があり、登記すべき対象となっています。
分譲型マンションで独立して所有することができる部分を「専有部分」といい、玄関部分やエレベーター・階段など共同して利用する部分を「共用部分」といいます。
なお、法律的には分譲マンションは「区分所有建物」または「区分建物」と呼ばれています。
マンションの登記で、一戸建ての建物の場合と最も異なる点は、表題部にマンション全体の表題部と専有部分の表題部がそれぞれ備えられていることです。登記事項証明書を見れば、個々の専有部分だけでなくマンション全体の様子も同時に調べることができます。
登記事項証明書の最初にはマンション全体についての表題部が記載されています。そこには、所在、構造、床面積などが表示されています。一戸建ての建物と異なる点は種類の表示がないところです。
たとえば、1階の各専有部分では店舗が経営されていて、2階では事務所、3階以上では住居というようなマンション全体の中で違った種類の専有部分が存在することになるからです。
また、敷地権について登記される場合には、敷地権の目的である土地の所在および地番、地目、地積などが表示されます。
続いて、専有部分についての表題部が備えられていて、床面積や敷地権の割合などが表示されています。この専有部分の表題部に続いて、専有部分に関する権利部(甲区と乙区)が記載されることになります。
当然のことですが、建物に住むためには、その建物の建っている土地を使用する権限がなければなりません。
マンションの専有部分を所有する場合にも、この土地(敷地)に関する権利が必要になります。
この土地(敷地)を利用する権利を「敷地利用権」といいます。敷地利用権には、所有権や地上権、賃借権などがあります。
古い分譲マンションの中には、マンションの各部屋(専有部分)の所有者が、敷地となっている土地を共有しているものがあります。
各部屋の所有者は(たいていは部屋の面積に応じて)土地の持分を持っているわけです。こうしたやり方によって、各部屋の所有者は、部屋を所有すると同時に、敷地の利用権を確保することができます。
しかし、土地と建物はあくまでも別個のものであり、それぞれを別々に売却することができます。つまり、このような方式では、マンションの部屋と土地の持分を別々に売却したり、また部屋の所有者が死亡した場合、部屋はA、土地の持分はBというように遺産分割することができてしまいます。
こうしたことが行われると、部屋の所有者は敷地の利用権を確保できないということになりかねません。そこで、法改正によって、区分建物の専有部分と敷地利用権とは、原則として、分離して処分できないことが明確にされました。
また、これにあわせて不動産登記では、「敷地権」の登記というものができるようになりました。
敷地権の登記とは、簡単に言えば、土地の登記記録に登記するのをやめてしまい、土地に関する権利の変動も建物の登記記録に記録してしまうものといってよいでしょう。
たとえば、一戸建ての建物と土地に抵当権を設定する場合、抵当権は、建物の登記簿とその建物の建っている土地の登記簿にそれぞれ記録されます。
これに対して、区分建物に抵当権を設定する場合、土地に関する権利の変動も建物の登記記録に記録されるため、土地(敷地)の登記簿に、抵当権の記録はされず、建物の登記簿にのみ抵当権の記録がなされることになります。このことは、区分建物の売買でも同じことです。
つまり、マンションの各部屋の登記簿に「敷地権の表示」などを記録することによって、その登記簿の甲区に売買の登記が記録されていれば、部屋だけでなく敷地利用権も一緒に売買されたということが公示されるわけです。これを「一体化」といいます。
原則として、部屋と敷地利用権との分離処分が禁止されているので、これで不都合はないということになります。
「敷地権の表示」の登記には、敷地権の種類(所有権、地上権、賃借権)、敷地権の割合(専有部分を所有する者がもつ土地の持分)などが記録されます。
なお、敷地権の表示が登記された場合には、登記官は職権で、敷地権の目的となった土地の登記簿に、敷地権たる旨の登記をします。敷地権の種類が所有権の場合なら、甲区に「所有権敷地権」と記録されます。
また、専有部分と敷地利用権との分離処分は原則として禁止されていますが、マンションの規約によって分離処分を可能にすることもできます。